【特許】出願審査請求料の減免制度の見直しについて(令和5年法律改正)
2024年4月1日より施行される令和5年の法律改正では、特許出願時の審査請求料に関する減免制度が見直されました。この改正の背景、具体的内容、および法的根拠を詳しく解説します。
背景:なぜ改正が必要だったのか
改正前の制度(特許法第109条、第109条の2、および第195条の2)では、以下の目的が掲げられていました:
- 資力制約を受ける者の支援
経済的困難にある個人や法人、中小企業、試験研究機関などを支援し、発明の奨励を目的としていました。
しかし、中小企業向けの減免制度を拡大した令和元年度以降、出願審査請求料について、大企業の平均的な出願審査請求件数並み、又はそれ以上の減免申請をする者が多数確認されました。このような制度利用は、資力等の制約がある者の発明奨励を目的とする制度趣旨にそぐわないと指摘されました。
さらに、減免制度の財源である特許特別会計(特許法第109条の2の財源)は、出願人等からの手数料収入で成り立っています。一部の者が必要以上に支援制度を利用することで、公平性が損なわれ、収支バランスが崩れる恐れがあるため、制度の適正化が求められたのです。
改正内容
1. 減免の適用件数に上限を設定
改正後の特許法第195条の2および第195条の2の2では、以下のように規定されています:
- 特許法第195条の2(出願審査の請求の手数料の減免)
資力制約を考慮し、政令で定める要件に該当する者に対し、手数料の軽減・免除が認められる。ただし、政令で定める件数を限度とする(特許法第195条の2ただし書き)。 - 特許法第195条の2の2
試験研究機関等に対する減免措置についても、特許法第109条の2第1項で定められた要件に基づき、研究開発能力や産業への寄与度を考慮して適用件数に上限を設ける。
2. 減免対象者の要件を柔軟化
特許法第195条の2および第195条の2の2では、減免対象者が一律の制限を受けるのではなく、資力の程度や研究開発能力に応じた要件設定が行われることが明示されました。具体的な基準については、政令(特許法等関係手数料令第1条の2)に委任されています。
施行期日と経過措置
- 施行期日
改正法は、2024年4月1日より施行されます(改正法附則第1条)。 - 経過措置
経過措置は特に定められておらず、施行日以降に適用されます。
改正の影響
この改正により、制度の趣旨に合わない利用が抑制されるとともに、以下のような効果が期待されています:
- 公平性の向上
減免制度が資力制約を受ける中小企業や個人により集中し、支援の実効性が向上します。 - 特許特別会計の安定
制度の収支バランスが維持され、長期的な運用が可能になります。
まとめ
出願審査請求料の減免制度の見直しは、特許法第195条の2および第195条の2の2を中心に制度の公平性と透明性を確保するために導入されました。資力や研究開発能力を考慮した新制度の下では、真に支援を必要とする者に適切な措置が提供されることが期待されます。特許制度を活用する皆様にとっては、この改正内容を十分理解し、適切に対応することが重要です。
参考資料
特許庁「令和5年法律改正(令和5年法律第51号)解説書」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/2023/2023-51kaisetsu.html