【特許】特許協力条約(PCT)における自己指定の意義と日本国内での取扱い

特許協力条約(PCT)は、多国間で特許出願手続きを統一的かつ効率的に進めるための国際条約です。このPCTには「自己指定」という概念があり、これは特に日本の出願人にとって重要です。本記事では、自己指定の基本的な意義と、日本国内で自己指定があるPCT出願と自己指定がないPCT出願の取扱いの違いについて、関連する条文や規則を交えて説明します。


自己指定とは?

自己指定とは、先の日本国内出願を優先権の主張の基礎とした特許協力条約(PCT)に基づく国際出願において、日本を指定国に含むことを指します(PCT第8条(2)(b))。特に、基礎出願に対して、明細書の補充や請求項の追加をした際に使われる方法です。この自己指定は、PCT出願が国内段階に移行する際に、日本国内での特許権取得手続きに影響を与えます。


自己指定がある場合の取扱い

自己指定がある場合、日本はPCTの「指定国」として含まれます。この場合、日本国内での特許取得に向けた手続きが以下のように進められます:

  1. 国内移行手続きの必要性
    自己指定されたPCT出願は、特許法第184条の3以降に基づき、日本国内移行手続きを行うことで、日本国特許庁(JPO)で審査が開始されます。この手続きでは、必要な書類の提出と手数料の納付が求められます。

    関連条文:

    • 特許法第184条の3以降(国際出願の国内移行等)
  2. 特許出願の日付(国際出願日)
    特許法第184条の3第1項に基づき、PCT出願が国内移行された場合、日本国内での出願日はPCTの国際出願日として扱われます。これにより、国際的な優先権を確保できます。

    関連条文:

    • 特許法第184条の3第1項(出願日)
  3. 手続きの期限
    日本国内移行のための手続きは、PCT条約第22条および特許法第184条の3以降に基づき、国際出願日から30か月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、日本国内での移行が認められなくなります。

    関連条文:

    • PCT条約第22条(国内段階の開始期限)
    • 特許法第184条の3以降(国際出願の国内移行等)
  4. 先の日本国内出願の取り下げ
    先の日本国内出願の取り下げは、所定期間経過後に取下げとなりますので(特許法第184条の15第4項)、管理が不要となります。


自己指定がない場合の取扱い

日本基礎出願についての対応が必要
自己指定のないPCT出願は、日本の国内出願とはなりませんので、優先権の基礎とされた日本の出願について、独自に権利化を進める必要があります。
具体的には、その日本出願の出願日から3年以内に審査請求を行ないます(特許法第48条の2、第48条の3)。


まとめ

特許協力条約(PCT)における自己指定は、日本の出願人にとって非常に重要です。自己指定がある場合、PCT出願の内容で日本国内での特許化を図ることができます。自己指定がない場合は、基礎出願を独自に権利化する必要があります。PCTを利用して、外国と共に日本で特許権取得を検討している場合、専門の特許事務所にお問い合わせください。

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