【特許】特許協力条約(PCT)に基づく国際出願とは?

特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)は、複数の国で特許を取得する際の手続きを簡素化し、コストと時間の負担を軽減するための国際的な枠組みです。1978年に発効し、現在では157か国が加盟しています(2024年9月現在)。PCT国際出願を利用することで、発明者や企業は1通の出願書類を提出するだけで、多くの国における特許取得の可能性を確保できます。この制度は、海外市場を視野に入れた知的財産戦略を検討する際に非常に有効です。


PCT国際出願の手続きの流れ

PCT国際出願の流れは次の通りです。

  1. 国際出願の提出
    PCT国際出願では、統一形式の書類を1通作成し、自国の特許庁(日本では日本国特許庁)に提出します。この出願により、全PCT加盟国で同時に出願したのと同様の効果を得られます。出願言語は日本語または英語が使用可能です。
  2. 国際調査
    出願された発明について、特許性(新規性、進歩性、産業利用可能性)を評価するための調査が行われ、「国際調査報告」が作成されます。この報告書は、発明の特許取得可能性を判断する重要な資料となります。
  3. 国際公開
    出願内容は、優先日から18か月経過後に国際的に公開されます。この公開は、世界知的所有権機関(WIPO)のウェブサイトで行われ、第三者による参照が可能です。
  4. 国内移行手続
    各国で特許を取得するためには、優先日から30か月以内に国内移行手続を行う必要があります。この手続では、翻訳文の提出や各国の特許庁が指定する手数料の支払いが求められます。

PCT国際出願の主なメリット

  1. 簡便な手続
    1通の出願書類を自国特許庁に提出するだけで、PCT加盟国すべてで同時出願した効果が得られます。また、多くの手続を自国の言語で行えるため、申請者の負担が軽減されます。
  2. 特許性評価の材料提供
    国際調査報告や見解書により、発明の特許性に関する情報を事前に得ることができます。これを基に、出願書類の補正や国内移行手続の優先順位を検討できます。
  3. 30か月の猶予期間
    優先日から30か月間の猶予期間を活用し、市場動向や発明の価値を見極めることができます。この期間を利用して、特許取得の必要性が高い国を選定することで、無駄なコストを削減できます。

注意点:PCT国際出願は「世界特許」ではない

PCT国際出願はあくまで手続きの簡素化を目的としたものであり、これ自体で特許が付与されるわけではありません。最終的な特許権の付与は、各国の特許庁による実体審査を経て決定されます。したがって、国内移行先の選定や翻訳の準備、手数料の支払いなどを適切に行うことが必要です。


まとめ

PCT国際出願は、発明や技術を海外で保護したいと考える発明者や企業にとって、非常に有効な手段です。この制度を活用することで、手続きの効率化とコスト削減が可能になるだけでなく、特許取得戦略の柔軟性も高まります。海外展開を計画している方は、ぜひPCT国際出願を検討してみてください。

さらに詳しい情報や具体的な手続きについては、特許庁の公式ウェブサイトをご参照ください。
(特許庁公式サイト)

また、特許庁が提供する「特許の国際出願制度のご案内(パンフレット)」も参考になります。
(PDFはこちら)

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