【特許】特許法第17条の4:優先権主張書面の補正

条文の概要

特許法第17条の4は、優先権主張書面の補正が可能な期間を定めた規定です。特許を出願する際、過去に出願した内容に基づいて優先権を主張することができますが、その主張に誤りがあった場合、一定期間内であれば補正が可能です。本条文は、その補正可能な期間を経済産業省令で定めるとしています。

条文

第十七条の四
第四十一条第一項又は第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張をした者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第四十一条第四項又は第四十三条第一項(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をすることができる。

解説

本条は、優先権の主張に関する補正が可能な期間を定めるための規定です。特許法条約(Patent Law Treaty: PLT)では、優先権の主張に関する補正や追加ができる期間を国際的に統一することが求められています。これに基づき、日本の特許法でも、優先権主張の補正期間を経済産業省令で定めることとしています。

優先権主張書面の補正とは、例えば以下のような場合に行われます。

  • 優先権を主張する基礎出願の出願日や出願番号の誤記
  • 基礎出願の国名の誤記
  • 他の形式的な記載ミスの修正

ただし、優先権の「追加」や「取下げ」は、補正とは異なる手続きとなるため注意が必要です。例えば、優先権の追加(特許法第41条第4項または第43条第1項)や優先権の取下げ(特許法第42条第2項)は、それぞれ別の規定で扱われます。

また、本条により補正が可能な期間については、特許庁が定める経済産業省令により規定されています。特許実務においては、出願後の手続きが適正に進められるよう、この補正期間を確認することが重要です。


関連法規および根拠

1. 特許法第17条の4(条文)

この条文は、優先権主張書面の補正を認める規定ですが、具体的にどのような補正が可能かについては明示されていません。ただし、優先権主張書面に関する補正が可能であることは、この条文から読み取れます。

2. 特許法施行規則(経済産業省令)

特許法施行規則 第11条の2の3

(優先権主張書面の補正の期間)
第十一条の二の三 特許法第十七条の四の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。

一 特許出願(特許法第四十四条第一項、第四十六条第一項若しくは第二項又は第四十六条の二第一項の規定による特許出願を除く。)について、同法第十七条の四の規定により同法第四十一条第四項に規定する書面又は同法第四十三条第一項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面(以下これらの書面を「優先権主張書面」という。)について補正をする場合 優先日(優先権主張書面について補正をすることにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から一年四月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から四月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)

二 特許法第四十四条第一項、第四十六条第一項若しくは第二項又は第四十六条の二第一項の規定による特許出願について、同法第十七条の四の規定により優先権主張書面について補正をする場合 優先日から一年四月、同法第四十四条第一項の規定による新たな特許出願に係るもとの特許出願の日、同法第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係るもとの出願の日若しくは同法第四十六条の二第一項の規定による特許出願の基礎とした実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から四月又は同法第四十四条第一項、第四十六条第一項若しくは第二項又は第四十六条の二第一項の規定による特許出願をした日から一月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)

この規則により、補正可能な期間が具体的に規定されており、優先権主張書面の補正が一定期間内であれば可能であることが明確になっています。

3. PLT(特許法条約)および実務解説

PLT(Patent Law Treaty: 特許法条約)規則14(3)
「優先権主張の補正または追加ができる期間は、PLTに基づく規則26の2.1で定める期間より短くないものとする。」

PLTでは、優先権主張の補正・追加について一定の国際的な統一基準を設けています。この規定を受けて、日本の特許法でも補正の期間が設けられています。

4. 特許庁の実務運用・審査基準

特許・実用新案審査基準 第28章 12節(特許庁)
「優先権主張の補正とは、すでに主張した優先権の内容について誤記があった場合にそれを訂正するために行うものであり、新たな優先権を追加するものではない。」

特許庁の審査基準では、「優先権の補正」と「優先権の追加」が異なる手続きであることが明示されています。具体的には、誤記の修正などが補正に該当し、新たな優先権の追加は別途の手続きが必要とされています。

5. 運用例

特許庁手続ガイドライン(第十四節 願書、特許請求の範囲、明細書、図面、要約書等の補正)によると、優先権主張書面の補正は、以下のようなケースに該当する場合に認められます。

  • 優先権を主張する基礎出願の出願日や出願番号の誤記
  • 基礎出願の国名の誤記
  • 他の形式的な記載ミスの修正

これらの補正は、特許法第17条の4および特許法施行規則第26条の3に基づき、出願日から16か月以内であれば認められるものとされています。


以上のように、優先権主張書面の補正に関する規定は、特許法、施行規則、国際条約、特許庁の審査基準など、複数の法的根拠に基づいています。実務においては、誤記が発生した際に速やかに補正手続きを行い、適正な出願手続きを確保することが求められます。

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