【特許】特許法第17条の2:願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正

特許法第17条の2の条文

(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)

第十七条の二 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。

二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。

三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。

四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

2.第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。

3.第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあっては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

4.前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。

5.前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。

一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除

二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)

三 誤記の訂正

四 明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

6.第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。


特許法第17条の2の条文の趣旨

特許法第17条の2は、特許出願に添付された明細書、特許請求の範囲、および図面の補正に関する詳細な条件を定めています。この条文の趣旨は以下の通りです:

  • 明確な手続きルールを設け、出願人と第三者に対して透明性を確保する。
  • 新規事項追加禁止やシフト補正禁止など、補正の制約を設けることで、迅速かつ公平な審査を可能にする。
  • 特許の権利範囲の安定性を確保する。

以下では、第1項から第6項までの内容を条文に基づいて詳述します。


第1項: 補正が可能な時期と範囲

第1項では、特許査定の謄本送達前であれば補正が可能であることを規定しています。ただし、拒絶理由通知を受けた場合は、以下の場合に限り補正が認められます:

  • 最初の拒絶理由通知を受けた場合、その指定された期間内に補正を行うこと。
  • 拒絶理由通知後に特定の通知(例:先行技術文献に関する通知)を受けた場合、その期間内に補正を行うこと。
  • 最後の拒絶理由通知を受けた場合、その期間内に補正を行うこと。
  • 拒絶査定不服審判を請求する際、その審判請求と同時に補正を行うこと。

これらの規定は、補正が迅速かつ公平に行われることを目的としています。


第2項: 誤訳訂正に関する補正

第2項では、外国語書面出願の誤訳訂正に関する補正について規定しています。

  • 出願人は、誤訳訂正書を提出し、その理由を明記する必要があります。
  • この規定は、第三者や審査官が補正の正当性を確認しやすくするために設けられています。

第3項: 新規事項追加禁止

第3項では、補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、または図面に記載された事項の範囲内で行われなければならないことを規定しています。

  • 新規事項を追加する補正は禁止されており、これに違反する補正は拒絶理由または無効理由となります。
  • この規定により、特許出願の範囲が明確に維持され、第三者の利益が保護されます。

第4項: シフト補正禁止

第4項では、拒絶理由通知後の補正が発明の内容を大幅に変更するものであってはならないと規定しています。

  • 発明の単一性(特許法第37条)が維持される必要があります。
  • この規定は、発明が過度に変化しないようにすることで、審査の効率と公平性を保つことを目的としています。

第5項: 目的外補正の禁止

第5項は、特許法第50条の2の通知と共に拒絶理由通知を受けた際、最後の拒絶理由通知を受けた際、または拒絶査定不服審判を請求する際に行う特許請求の範囲についてする補正は、特定の目的に基づくものである必要があることを規定しています。すなわち、本項では、上記の場合に行う特許請求の範囲における補正が、以下の4つの目的に限定されることを意味します。

  1. 請求項の削除
    • 特定の請求項を削除することで特許請求の範囲を簡素化します。
    • 例:先行技術との重複を避けるための請求項の削除。
  2. 特許請求の範囲の限定的減縮
    • 発明特定事項を下位概念化することにより、請求項を限定します。
    • 要件として、補正前後で産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であることが求められます。
    • 例:具体的な化合物や部品構成を追加して発明を特定。
  3. 誤記の訂正
    • 明らかな誤記や表記ミスを修正します。
    • 例:数字や名称のタイプミスの訂正。
  4. 明瞭でない記載の釈明
    • 拒絶理由通知で指摘された不明瞭な記載を補正します。
    • 例:用語の定義を追加して表現を明確化。

これらの規定は、発明の保護を十全に図るという特許制度の基本目的を考慮しつつ、迅速かつ的確な権利付与を確保する審査手続を確立するために、最後の拒絶理由通知以降の補正を、既になされた審査結果を有効に活用できる範囲内に制限する趣旨で設けられました(特許審査基準 第IV部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正より抜粋)。


第6項: 特許法第126条第7項の準用

第6項では、第5項第2号に基づく特許請求の範囲の限定的減縮において、特許法第126条第7項が準用されます。

  • 補正後の発明が、独立して特許要件を満たすものであることが求められます。
  • 特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正がされると、他の事項を目的とする補正の場合とは異なり、新たな先行技術調査が必要となることがあります。新たな先行技術調査がなされた結果、補正後の発明が特許可能なものでなかった場合に、改めて拒絶理由を通知することとすると、更に補正がされて、再度の審査が必要となることがあります。そこで、特許法は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正が独立特許要件を満たさない場合は、その補正を却下し(第53 条第1 項)、審査が繰り返しなされることを回避するとともに、出願間の取扱いの公平性を確保することとしています(特許審査基準 第IV部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正より抜粋)。

まとめ

特許法第17条の2は、補正が特許審査に与える影響を最小限に抑えるため、厳密な制約を設けています。この規定により、出願人と第三者の双方の利益を保護し、特許制度全体の透明性を高めています。


お問い合わせはこちら

24時間受け付けております。お気軽にお問い合わせください。