【特許】特許法第15条:在外者の裁判籍
特許法第15条は、在外者の裁判籍について規定しており、日本国内に住所や居所を持たない者(在外者)の特許権に関する訴えの裁判管轄を明確に定めています。この規定は、特許権者が海外在住である場合に、日本国内で適切な裁判所を指定することで、手続の確実性を確保することを目的としています。
特許法第15条の条文
(在外者の裁判籍)
第十五条 在外者の特許権その他特許に関する権利については、特許管理人があるときはその住所又は居所をもつて、特許管理人がないときは特許庁の所在地をもつて民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五条第四号の財産の所在地とみなす。
民事訴訟法第5条第4号
民事訴訟法第5条第4号では、以下のように規定されています。
(財産権上の訴え等についての管轄)
第五条第四号 日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
条文の趣旨と解説
特許法第15条は、在外者に対する特許権等に関する裁判手続きにおいて、裁判管轄地を設定するための特別規定です。在外者が日本国内に住所や居所を持たない場合、裁判管轄が不明確になる恐れがあります。そのため、本条では以下の2点を明確に規定しています。
- 特許管理人が存在する場合
特許法第8条に規定する特許管理人の住所や居所を裁判管轄地とします。 - 特許管理人が存在しない場合
特許庁の所在地を裁判管轄地とみなします。
特許権については、権利者が日本国内に住所も居所も有していない事例が極めて多く、特許権は無体財産権であることから「財産の所在地」というものが存在しません。そのため、民事訴訟法第5条第4号の規定のみでは不十分であり、本条のような特別規定が必要となっています。
無体財産権である特許権に対する裁判管轄地を明確化することで、特許権者が日本国外に居住していても、日本国内で確実に裁判手続きを進めることが可能になります。
実務上のポイント
- 特許管理人の選任
在外者は、特許法第8条に規定する特許管理人を選任し、その住所や居所を裁判管轄地とすることで、手続の迅速化や確実性を確保することが推奨されます。 - 特許庁の所在地
特許管理人が選任されていない場合は、特許庁の所在地が裁判管轄地となります。これにより、裁判手続が停止するリスクを避けられます。
特許法第15条の意義
特許法第15条は、在外者に関する裁判管轄地を明確化し、特許権の行使や訴訟手続きを円滑に進めるための重要な役割を果たしています。特許権は無体財産権であるため「財産の所在地」という概念が適用されにくいことから、本条において特許管理人の住所や特許庁の所在地を裁判管轄地とすることで法的安定性が確保されています。