【特許】特許法第8条:在外者の特許管理人

特許法第8条は、日本国内に住所や居所を有しない在外者が特許に関する手続を行う際に必要な特許管理人について規定しています。この条文は、在外者が特許制度を利用する際の手続きを円滑に進めるとともに、国内での対応を適切に行うための仕組みを提供しています。

特許法第8条の条文

(在外者の特許管理人)

第八条 日本国内に住所又は居所(法人にあつては、営業所)を有しない者(以下「在外者」という。)は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であつて日本国内に住所又は居所を有するもの(以下「特許管理人」という。)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。

2 特許管理人は、一切の手続及びこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服とする訴訟について本人を代理する。ただし、在外者が特許管理人の代理権の範囲を制限したときは、この限りでない。

条文の解説

在外者の定義と要件

特許法第8条では、日本国内に住所や居所を有しない者(在外者)が、特許に関する手続を行う際には、日本国内に住所または居所を有する特許管理人を通じて手続きを行う必要があると規定しています。この要件は、特許手続の迅速性や適切性を確保するために重要な役割を果たします。

特許管理人の役割と権限

第2項では、特許管理人が在外者の代理人として一切の手続や行政庁の処分に対する訴訟を代理できることを明記しています。ただし、在外者が代理権の範囲を制限した場合には、その範囲内での代理に限定されます。

特許管理人の主な役割:

  1. 特許に関する手続の代理
    • 出願、異議申立て、審判請求など、特許手続全般を代理します。
  2. 訴訟の代理
    • 行政庁の処分に対する不服申立てや訴訟を代理します。

政令で定める例外

特許法第8条では、「政令で定める場合を除き」と規定されています。この例外は特許法施行令第1条に詳細に定められており、以下のような場合に特許管理人を設ける必要がありません:

  1. 特許管理人を有する在外者(法人の場合はその代表者)が日本国内に滞在している場合
    • 在外者自身が国内で直接手続きを行える状況を指します。
  2. 在外者が特定の手続きを自ら行う場合
    • 対象となる手続には特許出願やその他経済産業省令で定める手続が含まれます。
    • ただし、以下の手続は除外されます:
      • 特許法第44条第1項による特許出願の分割に係る新たな特許出願
      • 特許法第46条第1項または第2項による出願の変更に係る特許出願
      • 特許法第46条の2第1項による実用新案登録に基づく特許出願
  3. 在外者が特許法第107条第1項に基づく第4年以降の各年分の特許料を納付する場合
    • 特許料の納付のみを目的とする場合は、特許管理人を設ける必要はありません。

これらの例外により、在外者が特定の状況で特許管理人を設置せずに手続を進めることが可能となります。

特許法第8条の改正

平成8年の一部改正において、特許法第8条は商標法条約との整合性を図るために改正されました。商標法条約第4条第6項では、代理に関して追加的な要件を課すことを禁止しており、この趣旨を反映して、特許法においても特許管理人についての登録制度が廃止されました。この改正により、特許管理人の選任等についての登録を第三者対抗要件としていた第3項が削除されています。

実務上のポイント

特許管理人の選任

在外者が特許管理人を選任する際には、以下の点に注意する必要があります:

  • 国内住所の有無 特許管理人として選任する代理人は、日本国内に住所または居所を有している必要があります。
  • 代理権の範囲 在外者が代理権の範囲を制限する場合、その内容を明確に文書で示す必要があります。

特許管理人が必要な手続

特許管理人が必要となる手続には、以下が含まれます:

  • 特許出願
  • 特許異議申立て
  • 特許無効審判
  • 行政処分に対する不服申立て

特許管理人を設置する意義

特許管理人を設置することで、在外者が特許制度を円滑に利用できるだけでなく、日本国内での迅速な対応が可能になります。これにより、特許手続がスムーズに進行し、在外者の権利保護が強化されます。

参考情報

特許法第8条の詳細な解説については、以下のリンクをご覧ください:

特許庁逐条解説 – 特許法

お問い合わせはこちら

24時間受け付けております。お気軽にお問い合わせください。