【特許】特許法第5条:期間の延長と期日の変更
特許法第5条は、特許庁が指定する期間や期日について、延長や変更の可能性を規定したものです。この規定は、特許出願人や利害関係者に柔軟な対応を提供することで、公平な特許制度を支える重要な役割を果たします。本記事では、特許法第5条の内容を解説するとともに、第4条との違い、および特許法条約(PLT)の関連性についても詳しく説明します。
特許法第5条の条文
第五条
特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。
3 第一項の規定による期間の延長(経済産業省令で定める期間に係るものに限る。)は、その期間が経過した後であつても、経済産業省令で定める期間内に限り、請求することができる。
延長の対象となる期間
特許法第5条に基づき延長可能な期間には、例えば、以下のものが挙げられます:
- 第17条第3項: 補正命令に対する応答期間
- 第23条第1項: 手続受継命令に基づく受継期間
- 第39条第6項: 協議命令に基づく協議結果の届け出期間
- 第50条: 拒絶理由通知に対する意見書提出期間
- 第84条: 裁定における答弁書の提出期間
- 第133条: 審判請求書の補正期間
- 第134条第1項: 審判請求に対する答弁書提出期間
- 第149条第2項: 参加申請に対する意見提出期間
- 第150条第5項: 証拠調または証拠保全に関する意見申し立て期間
- 第165条: 訂正審判における意見書提出期間
変更される期日
特許法第5条に基づき変更可能な期日には、例えば、以下のものが挙げられます:
- 第145条第3項: 口頭審理の指定期日
- 第151条: 証拠調べの指定期日
特許法第4条との違い
- 特許法第4条
「特定の法定期間」に適用されます。例えば、特許料の納付期限や審判請求可能期間が対象です。 - 特許法第5条
特許庁長官、審判長又は審査官が個別に指定した期間や期日に適用されます。証拠提出や意見陳述のための期間が該当します。
特許法条約(PLT)との関連性
特許法第5条は、特許法条約(PLT)の理念に基づいて設計されています。PLTは特許制度の手続面での簡素化や調和を目的としており、日本では平成28年6月11日に効力が発生しました。
- PLTの主な内容:
- 出願日の認定要件。
- 手続の簡素化。
- 期間延長や救済措置。
- 相当の注意を払った場合の権利回復。
- 優先権の訂正や追加。
- 権利移転等の登録。
特に、PLTに基づく規則(12規則)では、指定期間の延長や救済措置について詳細に規定されています。これに基づき、日本の特許法でも延長可能な期間を経済産業省令で定める形で制度化しました。
まとめ
特許法第5条は、特許庁長官、審判長又は審査官が指定する期間や期日の延長や変更を可能にする規定です。また、特許法第4条や特許法条約(PLT)の理念と密接に関連しており、特許手続きにおける公平性と利便性をさらに向上させています。これらの制度を活用することで、特許取得に関わる手続を円滑に進めることができます。
参考情報:
特許法逐条解説(特許庁)