【知財全般】書面手続のデジタル化のための改正(令和5年法律改正)
令和5年に実施された特許法等の改正では、特許庁における書面手続のデジタル化が一層推進されました。この改正は、特許庁が掲げる「手続のデジタル化推進計画」(令和3年公表)を具体化するものです。本記事では、この改正の背景や具体的な内容、今後の施行について解説します。
1. 背景と改正の必要性
従来の特許手続では、ペーパーレス計画に基づき、特例法を設けて一部の手続をオンライン化してきました。しかし、年間約20万件の手続が未だに書面形式で行われており、完全なデジタル化には至っていませんでした。また、政府全体で押印廃止やデジタル化推進の動きが進む中、特許庁も書類の電子化を求めるユーザーの声に応える必要がありました。
2. 改正の概要
今回の改正では、以下の2つの重要な措置が取られています。
(1) PDF形式での手続受付
これまで特許庁システムは高度なデータ処理を可能にするXML形式に限定されていましたが、PDF(Portable Document Format)形式での申請も受け付け可能になりました。これにより、電子的方式での申請が現実的となり、特許庁システム上での処理が柔軟に行えるようになります。
(2) 副本送達の電磁的方法化
特許無効審判の請求書や答弁書など、特許庁へ提出される副本が電子的に送達可能となりました。これにより、紙媒体を介さずに、ユーザーが迅速かつ効率的に手続を行うことが可能となります。
3. 改正による期待される効果
- 効率化と迅速化: 手続のオンライン化により、処理時間が短縮され、事務の効率化が図られます。
- ユーザー利便性の向上: 書類提出の柔軟性が高まり、ユーザーが特許庁に行う手続の負担が軽減されます。
- 環境負荷の低減: ペーパーレス化の推進は、持続可能な社会に貢献します。
4. 今後の施行スケジュール
本改正は令和6年1月1日に施行されています。また、今回の改正に伴う経過措置は特に定められていません。特許庁は引き続き、システムや運用の改善を進めるとともに、完全なデジタル化を目指していきます。
参考情報
今回の改正についての詳細は、以下の特許庁の公式サイトをご覧ください。
特許庁:令和5年法律改正の解説