【特許】発明者と特許出願人との関係、および特許を受ける権利の法的性質について

特許制度において、「発明者」と「特許出願人」の関係は、権利の帰属や移転、特許権の管理において重要な役割を果たします。また、発明完成により発生する「特許を受ける権利」の法的性質やその移転(譲渡)のルールを理解することは、特許の実務を進める上で不可欠です。本記事では、この関係性を特許法や関連法規の条文に基づいて解説します。


発明者とは?

「発明者」とは、特許法上、新しい技術的アイデアを創出した者を指します。具体的には、特許法29条に基づき、発明を完成させた人物が「発明者」と認められます。発明者は、その発明に対して最初に特許を受ける権利を有します。

職務発明の場合、いわゆる企業活動の一環として発明が行われた場合、特許を受ける権利が企業に移転することがあります。この移転に関するルールは特許法35条に定められており、企業は発明者に対して「相当の対価」を支払う義務を負います。


特許出願人とは?

特許出願人とは、特許を受ける権利を有し、その権利に基づいて特許庁に出願を行う主体を指します(特許法36条)。この権利は、特許を取得し、その発明を独占的に利用するための基盤となります。

特許出願人には次のようなケースがあります。

  • 発明者がそのまま出願人となる場合
    例:個人が独自に発明し、特許を受ける権利を保持している場合。
  • 企業が出願人となる場合
    職務発明に基づき、発明者から特許を受ける権利が譲渡された場合。
  • 権利譲渡が行われた場合
    契約や相続により、特許を受ける権利が移転し、譲渡先が出願人となる場合。

特許を受ける権利を有する者は、特許庁に対して特許出願をすることにより、発明の独占的な実施権(特許権)を取得できます。この特許権は、設定登録が完了した時点から発生します(特許法66条1項)。


特許を受ける権利の法的性質

1. 財産権としての性格

特許を受ける権利は、財産権として扱われます。この権利は、特許権そのものではなく、特許権を取得するための準備的な権利と位置づけられます(特許法33条、第34条)。

2. 無体財産権の一種

この権利は特定の物に直接結びつかないため、民法上の「物権」ではなく、「債権」に近い性格を持ちます。ただし、特許法で特別に保護されるため、一般的な債権とは異なる性質を有します。

3. 共有

発明者が複数いる場合は、複数の発明者で特許を受ける権利を共有することになります(特許法38条)。特許出願は共有者全員で行わなければならず(特許法第38条)、また、持ち分や費用負担などの取り決めが必要となります。


特許を受ける権利の移転

特許を受ける権利は譲渡可能な権利であり、契約や法定事由に基づいて第三者に移転します。その移転に関する主な場面と手続きは次の通りです。

1. 契約による譲渡

特許法34条により、特許を受ける権利は譲渡契約によって第三者に移転することが可能です。この場合、民法の一般原則に基づき、当事者間で合意を形成し、権利移転の意思表示を明確にする必要があります。特に、公序良俗に反する契約(民法90条)は無効となるため、契約内容の適法性が重要です。

2. 職務発明における譲渡

特許法35条に基づき、契約や就業規則などで定めがある場合、発明者はその定めに従い企業に権利を承継させることになります。この際、企業は「相当の対価」を支払う必要があります。

3. 相続や合併による移転

特許を受ける権利は、相続の対象となり、また、企業の合併によっても権利が承継される場合があります(特許法第34条第5項)。


発明者と特許出願人の関係の重要性

特許を受ける権利の移転が発生する場合、特許法や関連法規に基づく適切な手続きが求められます。特に、以下の点が重要です。

  • 発明者の権利保護
    発明者は特許を受ける権利を有する一方で、職務発明の場合、その権利を譲渡する義務を負います。この際、企業が発明者の貢献に見合った対価を支払うことが法的に義務付けられています。
  • 出願人としての適格性の明確化
    特許庁への出願にあたっては、特許を受ける権利の移転が適切に行われている必要があります。特許を受ける権利の移転に不備がある場合、特許出願が拒絶となったり、特許権が無効となるリスクがあります。

まとめ

発明者と特許出願人の関係、および特許を受ける権利の法的性質や移転について理解することは、特許制度を正しく活用する上で極めて重要です。特許法や民法の条文に基づき、権利の発生から移転までのルールを遵守し、発明者と出願人双方の利益を保護する仕組みを構築することが求められます。

本記事が、特許制度や関連手続きの理解の一助となれば幸いです。

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