【商標】キャッチフレーズは商標登録されるか?商標審査基準をもとにわかりやすく解説

キャッチフレーズは企業のイメージを伝えたり、商品やサービスの特徴を強調したりする大切な役割を果たしています。しかし、このようなキャッチフレーズを商標として登録することはできるのでしょうか?今回は、日本の商標審査基準を参考にして、キャッチフレーズが商標登録の対象となるかどうかを分かりやすく説明します。

商標登録における「識別力」の重要性

商標が登録されるためには、その商標が「識別力」を持っている必要があります。識別力とは、その商標を見た消費者が「これは特定の企業や商品のものだ」と識別できるかどうかです。日本の商標法では、識別力のないものは商標登録が認められません(商標法第3条第1項各号)。この識別力の有無を判断するための基準が「商標審査基準」です。

商標審査基準でのキャッチフレーズの取り扱い

商標審査基準によれば、一般に使用される宣伝広告的な表現や企業理念を表すキャッチフレーズは、識別力がないと見なされ、商標登録が認められないことが多いとされています(商標法第3条第1項第6号)。

商標登録が認められなかった例

特許庁は、次のようなキャッチフレーズは識別力欠如として登録を認めませんでした:

  • みんなにやさしい:このフレーズは、製品やサービスが「優しい」というイメージを伝えるだけで、特定の企業や商品の識別を示していないと判断されました(審決日:平成24年6月4日、審判番号:2011-22381)。
  • 初めてでも安心:こちらも一般的な宣伝表現であり、特定の出所を示すものとは見なされず、商標登録は認められませんでした(審決日:平成23年7月5日、審判番号:2010-27106)。

これらの例のように、指定商品やサービスに関連した一般的な言葉や宣伝文句は、出所表示の役割を果たしていないと判断されるため、商標登録が難しくなります。

商標登録が認められた例

一方で、以下のように特定の企業の長期使用や認知度が高まり、識別力が認められて商標登録が許可されたキャッチフレーズもあります。

  • 「お、ねだん以上。ニトリ」
    家具・インテリア製品を提供する株式会社ニトリのキャッチフレーズで、商標登録番号は第5292375号です。
    登録情報へのリンク
  • 「つくっているのは『未来』です」
    村本建設株式会社が使用するキャッチフレーズで、商標登録番号は第6728614号です。
    登録情報へのリンク

これらの例は、単なる宣伝文句にとどまらず、特定の企業やサービスとの結びつきが強いと認められたことがポイントです。

商標登録が難しい場合の対策

キャッチフレーズの商標登録が認められない場合でも、不正競争防止法による保護を考えることができます。長期間にわたり広く使用され、消費者が特定の企業と結びつけて認識するようになったキャッチフレーズについては、第三者が無断で使用した場合、差し止めや損害賠償を求めることが可能な場合があります。

まとめ

キャッチフレーズの商標登録は、一般的な広告表現や宣伝文句であると判断されると難しくなりますが、長期間にわたる使用や認知度の向上により、識別力が認められるケースもあります。キャッチフレーズを商標登録したい場合には、審査基準をよく確認し、必要に応じて識別力を高めるための戦略を立てることが重要です。また、商標登録が難しい場合には、不正競争防止法の活用も検討しましょう。

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