経営者のための知財戦略(24)「強みが持つ持続的競争優位」

経営者のための知財戦略(24)
「強みが持つ持続的競争優位」

知財戦略を描くためには、自社が有する特徴がオープンにしてよいものなのか、クローズドにしなければならないものなのかを判断する必要があります。それは、自社の強みを見出し、それが失われないようにすることにほかなりません。何が自社の強みでどうやってそれが維持されているかが分かっていないと思わぬ落とし穴に嵌ってしまう可能性があります。例えば、測定手順の標準化の際に、ノウハウとして保護すべき測定条件まで規格案に盛り込みすぎてしまったというような事例がありました。

改めて尋ねられると、自社の強みを明確に答えられない企業も多いのではないでしょうか?自社に有利な特徴が本当の強みか否かを判断するのに役立つフレームワークにVRIO分析があります。これは、アメリカの経営学者であるジェイ・B・バーニー氏により発案された分析手法です。企業の経営資源を「Value(経済的な価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの視点で評価します。知財戦略を描こうとする経営者には、このような手法も参照し、一度、自社の強みの棚卸をされることをお勧めします。

技術をオープン化しようとする段階では、自社製品の普及ばかりに目が行きます。しかし、市場が拡大したときに自社のシェアがそのままで価格もそのままとは限りませんので要注意です。競争優位を持続させるためクローズドの領域を維持する仕掛けが重要です。

この視点は、上記の「Imitability(模倣可能性)」に相当します。自社独自の独自の特徴があったとしても、他社が容易に模倣できるものであれば、競争優位は一時的なものになり、すぐに崩れ去ってしまいます。他社が模倣できない理由を突き止め、それを維持するための手段を講じておく、あるいは他社が模倣できない仕掛けを作っておくことが重要です。

模倣されないための有効な手段の一つとして特許がありますが、模倣防止手段は必ずしも特許に限りません。独自の原料調達先のようなネットワークの情報や製造条件のパラメータなどの技術的ノウハウが漏れないように管理するのも手段になります。手段にはそれぞれ長所短所があります。専門家とともに強みに持続的競争優位を与える手段を確認しておくと良いでしょう(白川洋一)。

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