経営者のための知財戦略(22)「オープン・クローズ戦略」
経営者のための知財戦略(22)
「オープン・クローズ戦略」
優れた技術を保有する企業は、自社技術を普及させて多くの人に使ってもらいたい一方で、自社技術を独占し利益を獲得したいというジレンマを持っています。自社技術が広く普及したとしても競合他社にまねされ放題では、自社の利益を確保できません。しかし、誰も使わなければいくら優れた技術でも宝の持ち腐れです。
これを解決するのがオープン・クローズ戦略です。自社技術のうち、他社に開放する領域と、自社で独占する領域を切り分け、それらを連動させることで利益を最大化する戦略です。技術普及の手段には、標準化、ライセンス化等があり、独占の手段には、特許化等による知財独占、ノウハウ秘匿によるブラックボックス化があります。
「標準化をビジネスで用いるための戦略(経済産業省)」より抜粋
オープン・クローズ戦略で成功した企業としてはインテルが有名です。インテルは、コンソーシアムを発足させ多くのリソースをつぎ込んで開発したUSB技術を無償で提供しています。USBがPCメーカー等に普及するとどうなるでしょうか?PCの周辺機器の需要が増えます。そして、PCの周辺機器の需要が増えれば増えるほど、高性能なCPUの需要も増えます。高性能なCPUは、インテルが特許化やブラックボックス化により独占を確保しているコア技術の領域です。つまり、インテルはUSBの普及にCPUの普及を連動させ、利益を最大化しています。
上記の例は、分かり易いですが、実際の現場では、オープンにすべきなのか、クローズドにすべきなのか迷う場合が多々あります。また、そもそも自社技術が生まれたときに、ノウハウにするものと特許化を図るものとを峻別し、積極的に特許出願をしておかないと戦略を立てようとしたときにコントロール可能な技術のネタがないことになります。知財を活用しようとする企業にとっては、必要に応じて専門家などの力も借りながら早い段階から準備しておくことが重要です(白川洋一)。