経営者のための知財戦略(21) 「自社製品が適切に評価される仕組み作り」

近年では、様々な分野にまたがる製品が生まれています。例えば自動車の自動運転一つをとってみても、全く異なってきた自動車と通信の分野にかかわっており、特にIoT関連で特にその傾向が顕著です。従来であれば新たな製品が開発されたとしても、特定の技術分野で使われてきた試験方法で十分な評価が可能であったかもしれませんが、現在では必ずしもそうとは限りません。適切な試験方法が無いことで自社製品の性能が取引先に理解されない場合も生じることがあります。

 

そのようなケースでは、経済産業省により創設された新市場創造型標準化制度の活用が有効です。新市場創造型標準化制度では、①生産者、②使用・消費者、③中立者に属する者がそれぞれ含まれる原案委員会を組織することで、業界団体を通さないJIS規格化が可能であり、自社の提案による自社に有利なルール作りを狙えます。

 

新たな製品による市場形成の場面では、製品の性能が高く評価される試験方法が確立されることが非常に重要です。「標準化ビジネス戦略大全(日本経済新聞出版)」には、光触媒の機能が低く評価されるような試験方法が標準化されたことで、光触媒市場が伸び悩んだ例が紹介されています。なぜ光触媒製品の製造企業は、自らの製品が高く評価されるような標準化ができなかったのでしょうか?上記の書籍の中で、一橋大学の江藤学教授は、特許のライセンスを受けられなかった側の研究者により規格化されたのが原因と分析されています。市場形成には自らが標準化にかかわることが重要です。

 

どのような試験方法で性能を評価するかは、新たな製品を開発した企業にとっては非常に悩ましい問題です。適切に標準化できれば、市場形成への重要な武器になりますが、できなかった場合には、光触媒の例のように市場が想定ほどに拡大しないこともありえます。一方で、最先端技術や自社のノウハウに関わる悩みでもあるため、誰にでも相談できるわけではありません。特許事務所はクライアントの新規技術を詳細に把握しており、自社製品の評価に悩む企業にとって頼もしい相談先になるかもしれません。自社の新たな製品の性能が適切に評価されない場合には、ぜひ一度特許事務所にご相談ください(白川洋一)。

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