経営者のための知財戦略(20) 「自社に有利なルール作り」
冬季北京オリンピックを迎え、小林陵侑選手によるスキージャンプ競技の金メダル獲得で沸く日本ですが、かつては「お家芸」とまでいわれ日の丸飛行隊がメダルラッシュした時代があったのを憶えていらっしゃるでしょうか?
その時代に比べて日本人選手が勝つのが難しくなった背景には、、欧州勢が力を持つ国際スキー連盟が行ったルール改正があると言われています。長野五輪まではスキー板の長さを「身長+80㎝」とするように長さ基準で決められていたのが、長野五輪以降は「身長の146%」と%基準に変更され、小柄な選手が多い日本人に不利になりました。
これと同様に、ビジネスの世界でもルールとしての「標準」が自社に有利か否かということは非常に重要な意味を持ち、規格制定の場面でしばしば主導権争いが生じます。ビデオ規格のVHS陣営とベータ陣営との争いは有名です。
フォーラム標準やデジュール標準のようにコンセンサスを前提とする標準では、通常、何か規格を提案し、それが制定されるには、業界団体を経由する必要があるため、時間がかかってしまいます。しかし、このような進め方では、成長分野において事業戦略にルール形成戦略を組み込む欧米企業とは差が開く一方です。そこで2014年に経済産業省により創設されたのが新市場創造型標準化制度(以下、新市場制度)です。この制度に採択されれば、業界団体を経由しない短縮されたフローでJIS規格やISO規格の制定が可能です。中小企業でも規格の提案は可能で、採択された企業の中には従業員2名の企業もあります。
優れた技術を有する企業が、自社製品の性能が際立つ規格を作れるというのが、新市場制度の醍醐味です。このような世の中の流れに対応し、平成30年(2018年)の弁理士法改正により弁理士の標榜業務に標準関連業務が追加されました。自社に有利なルール作りに興味のある方は、弊所も含め対応可能な特許事務所に支援をご相談ください。(白川洋一)。