経営者のための知財戦略(18)「スタートアップ企業の契約」

経営者のための知財戦略(18)
「スタートアップ企業の契約」

革新的なアイデアで市場を開拓し、短期で急成長をする企業であるスタートアップにとっては、知的財産の保護が重要な意味を持ちます。アイデアの重要な部分が流出すると、せっかく自社が開拓した市場が他社に奪われかねないためです。

スタートアップは、一時的に赤字を計上し,その後収益化する段階において短期間で大きく売上げを伸ばす事業計画を描く点で、一般的な中小企業とは異なります。赤字を出しながら事業連携によってやっと売上げが立つことが多いため、事業連携の際には不利な条件でも契約せざるを得ない状況に陥りやすくなります。

スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書(令和2年11月公正取引委員会)から引用

創業10年以内であること,非上場であることなどを条件に,公正取引委員会が、成長産業領域において,革新的な事業活動を行っている企業に実態調査を行っています。その調査では、連携事業者等から納得できない行為を受けたことがあるスタートアップが、約17%に上ることが分かりました(以下参照)。

(令和2年11月27日)スタートアップの取引慣行に関する実態調査について(最終報告)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/nov/201127pressrelease.html

その中には、不利なNDA、知的財産権を一方的に帰属させる共同開発契約を要請されたり、ライセンスの無償提供を要請されたり、知的財産に関して優先的地位の濫用に該当しうる例があると報告されています。公正取引委員会は、「独占禁止法違反行為に対しては厳正に対処していく」と述べており、連携事業者側にとっても不公正な契約を放置することは大きなリスクです。スタートアップやその連携事業者は、ぜひ上記の調査報告などをご参照いただき、公正な契約を結ぶことにご注意ください(白川洋一)。

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