経営者のための知財戦略(17) 「ノウハウの流出防止策」
経営者のための知財戦略(17)
「ノウハウの流出防止策」
ノウハウ秘匿と特許の切り分けは重要ですが、秘匿すべきノウハウが流出しないように手当てしておくことも重要です。「知的財産権活用企業事例集2018(特許庁)」には、株式会社シンテックのノウハウの流出とその後の取り組みを紹介しています。
その例では、契約を交わさずに納品を続け、製品の不具合対応をきっかけにノウハウを開示してしまった結果、共同開発の相手であった大手企業が海外の自社工場で生産する体制を採用し、オーダーが全て取り消しとなった苦い経験が明かされています。
取引を始める場合には、契約の締結が第一歩です。秘密保持契約を結ばずに立合いと言って工場を見学し、自社のノウハウを持っていかれて内製化されてしまったなどという例があります。また、契約を結ぶ場合でも、力関係を背景に片務的な契約の締結を強いられることもありますので、注意が必要です。
上記で紹介した株式会社シンテックでは、企業との話し合いの場などにも研究開発の段階から弁理士などの専門家に同席してもらうように手当てしているとのことです。このような例もご参照いただき、自社の知的財産を整理して取り扱いを確立するとともに、商談前には必ず妥当な秘密保持契約を結ぶようにしてノウハウの流出を防止してください。
(白川洋一)。