経営者のための知財戦略(16)「ノウハウ秘匿を活かした例」
経営者のための知財戦略(16)
「ノウハウ秘匿を活かした例」
BtoBの事業を行っている企業は、特にノウハウ秘匿と特許の切り分けが重要になります。例えば、工場に設置する専用の加工装置の製造を行っている企業にとって、その装置の使用方法に特徴がある場合にはどうでしょうか?工場内は他社から見えませんので、原則は、ノウハウとして秘匿し、使用方法が発展し装置の機能に昇華できる特徴になれば、特許出願するという運用が考えられます。
製品を使用する顧客側でも自社に適した使用方法があった場合、秘密にしたいでしょうから、上記の運用はそのような要求にも合致します。ただし、その場合でも、一律な運用ではなく、いずれ情報が外部に漏れる可能性や特許として権利化できる可能性を考慮した上で柔軟に運用した方が実態に合うと考えられます。
「社会と知的財産(放送大学教材)」には、まんじゅうやパンの製造工程に使われる自動包あん機を開発した企業が、機械の使用方法をノウハウとして秘匿して強みにしている企業の例が紹介されています。その事例では、機械を見ればわかるような構造上の特徴は特許出願し、「この機械をこのように使えばこんな菓子ができる」という使用方法はノウハウとして秘匿しています。そして、蓄積されたノウハウを、ユーザーサービスとして顧客だけに開示し技術指導の材料にすることで、競争優位を維持しています。
特許やノウハウ秘匿をどうやって活かすかは、自社の強みにもかかわる事業上の重要な戦略に関わっています。しかし、上記の通りノウハウと特許の線引きには、柔軟な運用が求められます。経営者や事業部だけですべてを決めるのは容易ではありません。特許事務所など外部の専門家の意見も取り入れて運用を決めてはいかがでしょうか(白川洋一)。