経営者のための知財戦略(14)「大企業に作らせる売らせるライセンス」
「大企業に作らせる売らせるライセンス」
研究開発型の中小企業が自社技術の応用製品について特許権を取る場合も、大企業と共同出願するという方法が採られる場合があります。ただし、特許権が共有されると、大企業は自社のみでも製品の製造販売が可能になるので、共有の代償を確保できるように手当てしておく必要があります。
特許権に基づいて大企業に独占的な実施権をライセンスするという方法もあります。この場合には、実施に応じたライセンス料率を設定することで、自社は利益を確保できます。いずれの場合でもうまくいけば、自社は、研究開発に専念し、大企業に製品の製造販売を託すことができ、中小企業の規模でも広く、例えばグローバルな市場に製品を展開できます。
例えば、「社会と知的財産(放送大学)」には、光学機器に優れた技術を有する従業員数約50名の「三鷹光器」が、ドイツの世界的光学機器メーカーの「ライカ」に独占的なライセンスを与え、その製品がアメリカにおいて脳神経外科手術用顕微鏡の50%強のシェアを占めた事例が紹介されています。この例では、自社を「研究開発者」と位置づけ、大企業を「生産販売者」とみなしてパートナーを組むというビジネスモデルが展開されており、「三鷹光器」が優れた技術を提供し、「ライカ」が世界的な販売網を活用するという連携が成功しています。
(白川洋一)。