経営者のための知財戦略(8) 「取引先との共同開発」

経営者のための知財戦略(8)
「取引先との共同開発」
材料メーカーや部品メーカーであれば、自社製品の販売先である最終製品メーカーとの取引を太くしたいと考えることがあるかと思います。取引先との関係を深める方法としては、取引先と共同開発し、その結果の権利を共有することが挙げられます。
しかし、例えば特許権を共有にした場合、取引先が大企業であれば単独で特許発明を実施されてしまうおそれがありますし、将来自社が別ルートで権利を許諾しようとしても取引先から同意が得られないおそれもあります。また、安易に契約してしまうと契約内容にしばられて他社と取引を開始できないケースもありえます。
中小企業経営者のための特許マニュアル(東京都知的財産総合センター)には、材料メーカーが顧客企業のニーズに対応してある材料を開発し、その材料を別の企業に販売しようとしたところ、契約書の販売制限条項をもとに顧客企業からストップがかかった事例が紹介されています。もちろんニーズの提示があってこその材料開発ですが、実際に試行錯誤し苦労の末に材料を完成させるのは材料メーカーですから、それを広く販売できないことを知り悔しい思いをしたのは想像に難くありません。
このような事態に陥らないためには、将来の事業展開を見据えたときに自社にとって譲れない条件あるいは好ましい条件が何なのか明確にし、それらを満たすべく契約時に交渉しなければなりません。上記の特許マニュアルには、交渉する際の実際的なアイデアとして、以下が挙げられています。
1)販売制限を受ける期間を一定期間に限定する。
2)一定期間の優先供給を約束する。
3)別のメーカーに対して販売する材料についてロイヤリティを支払う。
契約が将来描いている自社のビジネスモデルや取引先との関係に沿った形になっているかをしっかりと確認しておかなければ、重大な支障が生じることがありますので、注意が必要です(白川洋一)。

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