経営者のための知財戦略(6)「知財金融が奨励される理由は?」

経営者のための知財戦略(6)
「知財金融が奨励される理由は?」
近年では、特に知財の価値を評価して資金調達に役立てる試みがなされています。地域知財活性化行動計画実績・成果報告書のデータによれば、2016年度に融資を実行した金融機関数は、30だったのが2019年度には73まで増加しています。そして融資につながったビジネス案件数もその間に42から112に増加しています。

地域知財活性化行動計画実績・成果報告書(令和2年7月14日特許庁)より引用

 資金調達の場面においても特許などの知財の重要性が増しており、将来、展開しようとするビジネスモデルとの関係で知財を積極的に評価しようとする金融機関が増えてきました。知財を重視する企業にとっては、このような傾向や仕組みがあることは、頭の片隅に置いておくべき情報だと思います。では、どうして政府は知財金融に力を入れようとしているのでしょうか?

「経営デザインシート」-経営をデザインする-(内閣府)より引用

20世紀は、良いものを作れば売れる時代でした。しかし、その後、供給力が向上し、新技術・新製品でも選ばれないと売れなくなりました。例えば、コンビニはどうでしょうか?ただ、漫然と商品を店頭に並べただけでは利益は得られません。ブランド、商品開発力、売れ筋を予測して仕入れを行うためのデータベースなどあらゆる手段を駆使することで収益を上げています。このような強みは、無形資産です。時代の移り変わりとともに、企業における価値の源泉が有形資産から無形資産に変わっています。

2015年において無形資産が87%という上記の内閣府の資料はS&P500(米国証券取引所に上場された代表的な500銘柄で構成される株価指数)時価総額に占める割合を示しています。上記は、世界的に競争力の高い企業の資産構成ですが、経産省の資料によれば、日本国内でも緩やかに同様の変化が進んでいます。

国内企業の投資活動に占める無形資産投資比
持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会(第1回)
資料6事務局資料(平成28年8月24日、経済産業省)より抜粋・加工

 無形資産は外部から見えづらく伝統的な金融の対象とはなってきませんでしたが、そのままでは日本企業の競争力が高まりません。知財も含めた無形資産による資金調達に政府が力を入れている理由です(白川洋一)。

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