なぜ標準化が活用されていないのか?

2017.06.29
(1)ビジネスツールとしての標準化
最近、製造業の事業戦略として知的財産をどうするかだけでなく、標準化についても考えましょうという話をよく耳にするようになりました。これについては政府も力を入れており、例えば、官邸が出している知的財産推進計画2017(案)では、「知財・標準化戦略の一体的推進」ということが謳われています。「標準化」とは、具体的に言えば、自社技術に関連する基準をJISやISOのような規格として採用されることを指します。これがどのようなメリットをもたらすかについては、「標準化をビジネスツールに」という経済産業省提供の資料に分かりやすく説明されています。資料には、経産省やJSA(一般財団法人 日本規格協会)による技術の標準化支援により、標準化をビジネスツールとして活用した事例が紹介されています。
(2)活用事例
例えば、時計メーカに蓄光材を供給する企業が高輝度長残光の夜光塗料を実現したという事例では、その企業が「性能を際立たせるような評価標準をISOとして策定することに成功」しています。そして、自社技術を評価する方法を標準化して、顧客への自社技術の認知度・信頼度を向上させた結果、「夜光時計市場でほぼ100%のシェアを実現」しています。このように、上記の時計メーカは、市場を広げるツールとして「標準化」を活用しました。

「標準化をビジネスツールに」の事例A(蓄光材製造)、経産省サイトより引用http://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/businesstool.pdf

(3)知的財産戦略の必要性

「標準化」は、優れた市場拡大ツールですが、他社排除ツールとしてはあまり機能しません。そもそも標準自体は、誰に対しても公平でなければならず他社排除の機能はありません。また、新たな市場を立ち上げるとなると自社技術を他社に開放しなければならない場面が生じることもあります。

自社技術の評価基準の「標準化」を目指す場合には、あらかじめ開放して技術を普及させるところと独占して利益を獲得するところをどうするかという方針を考えておく必要があります。このように、「標準化戦略」と「知財戦略」は一緒に考えておくべきものです。

(4)標準化を活用できていない理由

今のところ、標準化をビジネスツールとして活用できている企業はわずかです。なぜ多くの企業が標準化をビジネスツールとして活用できていないのでしょうか?多くの企業が標準化のメリットを把握しておらず未検討だからという理由が大きいと思いますが、自社だけで戦略をどう考えていいのか分からないという理由もあるのではないかと思います。「標準化」や「知的財産」は、技術と知的財産に詳しい弁理士が得意とするところです。日本弁理士会は、標準化支援のパートナー機関として認定されており、例えば顧客から標準化の活用に効果のありそうな相談があれば、JSAと連携して標準化を支援することが可能になっています。新しい技術を活かした市場の立上げや拡大の方法を検討する場合には、弁理士を活用できるかもしれません。

(記事作成者:弁理士 白川 洋一)

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